3回の別れ

人生

祖父が遠くの病院に入院し
時々見舞いに行った。

見舞いに行った先の
病院で食べたカレーが美味しく

世の中にこんな美味しいものが
あるなんて。

出先の玩具屋では

バトロイドバルキリーの
プラモデルが売ってある。

カッコいい!

欲しい!

と祖父の見舞いも大事だが
僕はおでかけの楽しみの方に
心ウキウキしていた。

やがて祖父は退院し

家で養生していたが、ずっと寝込んでいる。

どうやらかなり具合が悪いようだ。

何かの病気かなのかわからない。

祖母が付ききりで看病をし
下の世話までやっているところをみると

ひょっとしたら
もう長くはないんじゃないか・・・

何となくそう感じつつも
僕は普段の生活を送っていた。

季節は冬から春になろうとしていた。

土曜日の夜である。

座敷では両親、祖母が祖父に付ききり状態だ。

もしかしたら・・・

8時だョ!全員集合

のあと

ゴールデン洋画劇場

を観ていた僕は

父親に呼ばれて座敷へ行くと

すでに祖父が息を引き取っていた。

祖母と母親は涙を流していた。

生まれて初めて人の死に直面したのだ。

何だかとても静かな夜だった。

翌日から

親戚一同が集合し、通夜、葬式が行われ

祖父を見送ったのだ。

人が死んだ時って
こうやって人がたくさん
お別れをしに来るものなんだなと。

そして

また次に
人の死に直面することになる。

今度は同級生のF君が亡くなったのである。

学校行事の水泳大会。

父兄も観にくる行事である。

25mの平泳ぎだった。

4コース目から勢いよく飛び込んだ
F君だったが

ゴール手前で突然失速し

プカプカ浮いてしまったのだ。

すぐさま水泳担当の先生が
救助に向かってF君を救出。

そこへ

F君の母親が泣きながら走ってきたのだ。

F君はすぐさま病院へ搬送され

水泳大会は中止となったのである。

僕たちは教室に戻り
先生たちは職員室に集合していたようだ。

教室では沈黙が続き
F君のことが気になっていた。

そして

担任の先生が
深刻な顔で教室へ帰ってきた。

「F君ですが・・・」

「残念ですが、亡くなりました・・・」

教室全体が沈黙し
その日は集団下校となった。

F君はゴール手前で
心臓麻痺を起こし、亡くなったのである。

ちょっと太っていて、とても明るくて

誕生日会では

「万引き子豚」

を演じて
僕たちを笑わせてくれた。

ありがとうF君。

安らかに。

そしてもう1つ

愛猫の

「タマの死」

である。

初めて我が家にやってきたタマ。

可愛くて可愛くて

いつもそばにいる相棒で

足元にスリスリしてきたり、
こたつの中で伸び切って寝ていたり

僕が欲しい癒しの全てを
タマは与えてくれたのだ。

でも

ある日突然いなくなり・・・

祖母に聞いてみると
猫は自分が死ぬ時は、人に姿を見せない。

と教えてくれて

僕は、タマがいない日常に寂しさを感じていた。

ある日
とうとうタマが死んだのだ。

祖母いわく

小屋の2階で静かに
死んでいたらしい。

そして
タマの亡骸を箱に入れて
僕はタマとお別れしたのである。

タマの亡骸は
父親が山のどこかへ埋めてきたという。

今では不法投棄になるのかな?
昔はそんなこともしていたのである。

タマがいなくなった
こたつの中で

僕は誰にも気づかれないように嗚咽した。

祖母の死の時も
F君の死の時も
泣かなかったのだが

タマの場合は違った。
僕は
タマに愛情を注いだ分
失った悲しみも大きかったのだ。

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